News and Announcements [in Japanese]
地磁気センターニュース


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地磁気世界資料解析センター News No.90 2005年3月30日
 
 
1.新着地磁気データ
 
      前回ニュース(2005年1月24日発行, No.89)以降入手、または、当センターで入力したデータの
  うち、主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
  (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等については、観測所カ
  タログ(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
  また、先週の新着オンライン利用可データは、
  (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で御覧になれ、2ヶ月前までさかのぼること
 もできます。
 
      Newly Arrived Data
 
        (1)Annual Reports and etc.
 
               LAQ (2003),  TNB (2004),  SOD, OUJ, HAN,  NUR (Dec., 2004 - Jan., 2005)
               SPT,  GUI (2001),  LRV (2004),  NGK (Dec., 2004),
               SPT, GUI (2002), KIR (Jul., 2001 - Jun., 2002), MMK, LOZ, TUM (Jan. - Sep., 2004)
 
        (2)Kp index: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
 
               Jan., - Feb., 2005
 
        (3)Magnetogram Digital image files :
 
               ASO (1958, 1959, 1963 - 1965),  FUR (1959, 1960)
 
 2.Dst指数、AE指数とASY/SYM指数
 
    Quick Look Dst指数(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/dstdir/dst1/quick.html) 、および Quick Look AE
指数 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aedir/ae/quick.html) は1日以内の遅れで当センターのホームページ
から利用できます。また、2004年12月〜2005年1月分の1分値ASY/SYM指数を算出しホームページに
載せました (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。さらに、2004年分を載せた
「MID-LATITUDE GEOMAGNETIC INDICES ASY and SYM(PROVISIONAL)No.15 2004」を印刷、配布しました。
新たに配布御希望の方は、センターまでお申し込み下さい。
 
3.Provisional Geomagnetic Data Plots について
 
  世界各地で測定された地磁気1分値データをプロットしたProvisional Geomagnetic Data Plotの2005年
1月までのポストスクリプトファイルが利用できるようになりました。図の形式は2日分が1画面です。
(ftp://swdcftp.kugi.kyoto-u.ac.jp/data/pplot)。また、2004年7月から12月を載せたProvisional Geomagnetic
Data plots No.30 (Jul. - Dec., 2004)も配布しました。新たに配布ご希望の方は、センターまでお申し
込みください。
 
4.データカタログNo.27の印刷と配布
 
  当センターで収集・整理・サービスしております地磁気データのカタログNo.27を印刷し、関連機関
に配布しました。残部がまだ多少ありますので、新たにご希望の方は郵便またはファクシミリにて
当センターまでお申し込み下さい。
 なお、当センターのホームページから、上記カタログのPDF版
当センターまでお申し込み下さい。
 なお、当センターのホームページから、上記カタログのPDF版
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/pdf/Catalogue/Catalogue.pdf)が利用できるほか、オンライ
ン利用可データのカタログは原則として毎週更新されており、8週間前から先週までの新着データ一覧も
下記URLからご覧になれます。
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html
  また、下記URLアドレスから、指定された緯度・経度の範囲内の観測所についての印刷されたカタログ
に準じた観測所情報のリスト出力が可能です。
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html
 
 
5.海底地磁気永年変化と外核表面の流れ
 
  3月7〜10日の4日間、筆者はWDC特別講義の講師として、再び春まだ浅い古都を訪う事ができた。
半年振りの京大北部キャンパスは、降り注ぐ柔らかな陽射しの中を馬術部員に連れられた馬が前期日程の
合格発表の人込みを縫うように闊歩し、まだ雪深い北国とは対照的にすっかり春めいていた。日頃詩心
とは縁遠い私も、つられてふと家持の歌などを思い出していた。
 
春の苑 紅匂ふ桃の花 下照る道に 出で立つ乙女
 
 後期のシリーズでは、”Geophysical Mapping of the Surface EM fields into the Earth”と題し、
地表或いは海底または衛星高度で観測された電磁場を如何にして高次のモデルに焼き直すかを、写像I
「地殻比抵抗構造から間隙水分布へ」・写像II「地表電磁場から全マントル電気伝導度構造へ」・写像
III「地磁気鉛直成分とその永年変化を外核表面の流れへ」の三つに分けて講じた。このうち本稿では
写像IIIを取り上げてみたい。
 
 

 
図1.北西太平洋で観測された海底地磁気三成分の永年変化。黒の破線が衛星の予測値。
 
 図1に、エルステッド衛星が予測する地磁気3成分の永年変化(Olsen, 2002)と海底での実測値との
比較を示す。図から分かる通り,磁場観測衛星の予測値と海底での実測値は3成分とも良い一致を示すが、
鉛直成分の右肩上がりの傾向が特に良く再現されている。しかし、これら海底における地磁気3成分の
永年変化は,方位或いは傾斜変化といった姿勢データの品質が向上して初めて観測可能になった事には
注意が必要である。すなわち,地磁気計測は測定装置の姿勢変化に非常に敏感であり,並行観測量として
高精度の姿勢データが無ければ,どんなに磁場に対する感度を上げたとしても今や殆ど無意味なのである。
この事は何も海底地磁気観測だけに当てはまる事ではなく,無人連続観測という意味では同種の,衛星に
よる地球磁場観測にも言える事である。
 
 ここで、地上数百kmの高さで測られた地球磁場のゆっくりとした時間変化と、海面下数千mの海底で
衛星観測とは全く独立に測られたそれとが不思議な一致を見せた事の意味を、もう少し敷衍して考えて
みたい。一つ言える事は、今や海底でも地磁気永年変化が成分に分けて観測可能である、という事である。
つまり,海底での無人観測の場合であっても,地磁気成分の絶対観測は最早不可能ではないのである。
更に、衛星による地球磁場観測がSea Truthにより確認された事は、長寿命衛星による地球磁場観測は、
ある時間点での地球磁場の詳細なマッピングを可能にするだけでなく、その時間変化についても信頼する
に足るデータを供給できる事を示唆している。
 地磁気鉛直成分とその永年変化の精密マッピングから分かる事の一つに、外核表面の流れ場がある
(Backus et al. 1996)。すなわち、
 
(1)	磁場凍結近似(Roberts & Scott, 1965)
(2)	マントルを絶縁体とみなして、地表の地磁気とその永年変化をCMBまで下方接続
(3)	外核表層は安定成層(Whaler, 1980)、或いは、地衡流平衡が成立(LeMouel, 1984)
 
の3点を認めれば、地磁気の動径方向成分とその永年変化を用いて、外核表面の流れの場を推定できる。
図2は、Olsen & Holme (2003) が地衡流平衡を仮定して求めた外核表面の流れの場である。これはつまり、
衛星高度で地磁気の特に動径方向成分を精密に測定し続ければ、外核表面の写真が撮れる、という事を
意味している。実際には、有限な電気伝導度を持つマントルが、外核表面での磁場変化が地表に出て来る
までの時間を遅らせ、短周期の永年変化を打ち消してしまうので、ピントがぴたりと合った外核表面の
流れのリアルタイム写真撮影をする訳にはいかない、という点は考慮する必要がある。但し、これらマン
トル中の電磁場拡散効果のうち前者は7年程度の時間遅れしか作らず、また、周期4年より長い変化に対し
ては後者の効果が弱く、外核表面の磁場変化がほぼそのまま地表に現れると考えて良い事も知られている
(Backus et al. 1996)。いずれにせよ、コア・ダイナミクス研究分野にとってこの情報は、今後非常に
強い拘束条件となり得る。
 
 ヨーロッパ宇宙局(Eurpopean Space Agency: ESA)は、Orsted・CHAMPと続けてEU諸国が打ち上げて
きた地球磁場観測衛星の後継機として、SWARMミッションを昨年正式に採択した。これが実現すれば、
full solar cycle をカバーする衛星地球磁場観測を欧州は自力で完結する事になる。ESA公式文書SP1279
第6巻(ESA, 2004)によれば、その打ち上げはCHAMP衛星の寿命が尽きる2008年末に予定されているようで
ある(図3)。日本の地球内部磁場関係者の一人として筆者は、ポストSWARMを目指した国産地球磁場観測
衛星を実現する必要性を痛感する。
 
   塩野七生氏によれば、スキピオ・アフリカヌスの仇敵であり演説の名手でもあった大カトーは、ローマ
元老院におけるいかなる演説の最後も、以下の一句で締め括ったという。「ところで私はカルタゴは滅ぼ
されるべきものと考える。」私は次の言葉を結語としたい。「ところで私は国産地球磁場観測衛星は打ち
上げられるべきものと考える。」
 
 

 
図2.衛星データから推定した外核表面での速度場。Olsen & Holme (2003)による。
 
 

 
図3 現在飛翔中の欧州関係の地球観測衛星と将来計画の一覧表。ESA (2004)から抜粋。
 
 
参考文献
 
Olsen, N., A model of the geomagnetic field and its secular variation for epoch 2000 estimated
   from Orsted data, Geophys. J. Int. (2002) 149, 454-462.
Backus, G., Paker, R. & Constable, C., Foundations of Geomagnetism, Cambridge University
   Press, New York, 1996.
Roberts, P. & Scott, S., On the analysis of the secular variation I. A hydrodynamic constraint:
   theory, J. Geomag. Geoelectr., 17, 137-151, 1965.
Whaler, K., Does the whole of the Earth’s core convect?, Nature, 287, 528-530, 1980.
LeMouel, J. L., Outer core geostrophic flow and secular variation of Earth’s magnetic field,
   Nature, 311, 734-735, 1984.
Olsen, N. & Holme, R, Secular variation and secular acceleration determined from Orsted
   satellite data, Poster presentation at EGS/AGU spring meeting, 2003.
European Space Agency, Reports for mission selection 6. Swarm - The Earth’s Magnetic Field
   and Environment Explorers, ed. B. Battrick, ESA SP-1279(6), 2004.
 
                                                    (藤 浩明 − 富山大学・理学部・地球科学 
                                                        地磁気世界資料解析センター・非常勤講師)
 
 
 
6.地磁気世界資料解析センター活動報告 (2004年1月−12月)
 
1.データサービス
 
  (1)収集・発送(最近5年間)
                          2000      2001      2002      2003      2004年
  【収集】
    マイクロフィルム        4本         6本        11本      12本         10本
    マイクロフィッシュ    30枚          7枚          5枚      3枚           3枚
    データブック      120冊       120冊       60冊     40冊         35枚
    データシート      500枚       400枚      400枚    250枚       300枚
 
    磁気テープ          0本         12本       0本      0本           0本
    ディスク類             55枚        91枚     60枚        40枚         35枚
    オフラインデータ				   25GB       30GB       40GB
  【発送】
    データブック      700冊       464冊      900冊      400冊       430冊
 
     ネットワーク       1100MB     2000MB   4000MB        6GB           8GB
  【発送】
    データブック      700冊       464冊      900冊      400冊       430冊
    データシート     3552枚     3500枚   3500枚  3900枚     4400枚
    ディスク類           154枚         56枚     80枚        15枚      44枚
 
WWWホームページ  1840Kリクエスト 1911Kリクエスト 3149Kリクエスト 3049Kリクエスト 3669Kリクエスト
                          16500MB         9400MB       26200MB     33600MB       41470MB
 
    地磁気データのホームページからのリクエスト件数
   地磁気1時間値    1131      3418    6254     4895     4889
     KP指数              2290        2309      2124      2195       2894
   地磁気1分値         8652      8186    15055   16149    14022
    地磁気1秒値     16326        3396    2536    4338       7929
 
  (2)印刷・出版
     (ア)データブック
      Mid-latitude Geomagnetic Indices ASY and SYM (Provisional) No.14(2003)
      Provisional Geomagnetic Data Plots No.28,29 (July 2003 - June 2004)
      (イ)データシート
      Provisional Dst Index (October 2003 - November 2004)
      (ウ)ニュース
      地磁気世界資料解析センターニュース (No.83 - No.88)
 
  (3)オンラインデータベース
      (ア)World Wide Web ホームページの追加と更新
           1. 信楽磁場観測データのオンラインリアルタイムマグネトグラムサービス
         2. 準リアルタイム地磁気データ表示
        国外  30ヶ所
        国内     5ヶ所
         3. Near-realtime,prov,final Dst表示及びダウンロード
         4. Quicklook AE表示及びダウンロード
         5. リアルタイムPi2型脈動検出+データ表示(峰山、信楽、柿岡)
         6. アーカイブ地磁気データ(1秒値,1分値,1時間値)のプロットとデータ出力
         7. 地磁気AE/ASY/Kp指数のプロットとデータ出力
         8. オンラインデータカタログ(自動更新)
         9. 国際標準モデル磁場(IGRF-10)の計算・表示
        10. 国際標準電離層モデル(IRI90)による電離層電気伝導度
          11. オンラインマイクロ画像データサービス
       12. データカタログのPDFファイル化とHPからのサービス
       13. 観測所年報のPDFファイル化
 
 
7.地磁気センターニュースNo.89 (2005年1月号)
    "伊能忠敬の『山島方位記』から19世紀初頭の磁針偏角を割り出し活用する" の正誤表および補足
 
[ 正誤表 ]
 
  4頁 伊能図掲載朝鮮の山々と対馬での測量地点の同定地図
  ×朝島のチョクキル(直吉)    ○朝島のチッキル Chikkiru
 
[ 補足 ]
 
  十二支方位の北方向の「子」は345°〜0°〜15°の範囲を指すが、『伊能図』及び『山島方位記』では
  「子」は0°〜30°を指し、「亥」は330°〜360°を指す。
    表現は当時一般的であった十二支方位であるが、データの内容は西洋式方位の360°方位が採用された。
 
[ 謝辞 ]
 
  田代博氏には山岳展望による山座同定の基礎技術及び研究の全般にわたる重要な助言と指導をいただ
  いた。
 
                                                                辻本元博(日本国際地図学会会員)