News and Announcements [in Japanese]
地磁気センターニュース


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 地磁気世界資料解析センター News No.93 2005年9月30日
 
 
 
1.新着地磁気データ
 
    前回ニュース(2005年7月28日発行, No.92)以降入手、または、当センターで入力したデータの
うち、主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等については、観測所カ
タログ(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
また、先週の新着オンライン利用可データは、
  (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で御覧になれ、2ヶ月前までさかのぼること
 もできます。
 
    Newly Arrived Data
 
      (1)Annual Reports and etc.
 
  	   AQU (2004), SOD, OUJ, NUR (Jan. - Jul., 2005), NGK (Jul., 2005)
 
 
   (2)Kp index: ((http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
 
      Jul. - Aug., 2005
 
 
      (3)Magnetogram Digital image files :
 
      IRT (1949 - 1954), KZN (1951 - 1957), MOS (1944 - 1957), YSS (1932 - 1944),
            ODE (1946 - 1956, 1979 - 1998, 2003 - 2004), SRE (1936 - 1957), VLA (1934 - 1947),
            ETT (1980), HYB (1999), FUR (1983 -1986)
 
 
 
 2.Dst指数、AE指数とASY/SYM指数
 
     2004年12月〜2005年4月のDST 指数 Quick Look Dst (Provisional) を算出し、関係機関に配布し
ました。なお、Quick Look Dst指数(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/dstdir/dst1/quick.html) 、および
 Quick Look AE指数 (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aedir/ae/quick.html) は1日以内の遅れで当センター
のホームページから利用できます。また、2005年8 月分までの1分値ASY/SYM指数を算出しホーム
ページに載せました (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。
 
 
3.Provisional Geomagnetic Data Plots について
 
  世界各地で測定された地磁気1分値データをプロットしたProvisional Geomagnetic Data Plotの2005年
  8月までのポストスクリプトファイルが利用できるようになりました。図の形式は2日分が1画面です。
(ftp://swdcftp.kugi.kyoto-u.ac.jp/data/pplot)。
 
 
 
4.トルコ・イニクリ観測所磁力計設置報告
 
  2005年8月17日から26日の間、トルコ北西部のイニクリ(Inikli)村にて磁力計の設置を行ってきました。
トルコで対応していただいたのは、ボアジチ(Bo?azici)大学のムスタファ・トゥエンチェル(Mustafa Tuncer)
博士です。トゥエンチェル博士は内部電磁気学がご専門で日本にも2年間留学されていたそうです。今回は、
トゥエンチェル博士と長年の共同研究を行ってこられた京都大学防災研究所の大志万直人教授にご同行いただき、
トルコ側との交渉や事前準備などに多大なご協力をいただきました。
 ボアジチ大学はイスタンブール市内のヨーロッパ側にあります(図1)。(イスタンブールはボスポラス
海峡によって東西に分かれており、西岸をヨーロッパ側、東岸をアジア側と呼びます。ボスポラス海峡を
トルコ語で表すとボアジチ海峡となり、これが大学名に使われています。)
 
 
 
        
        <図1:トルコ全図とイスタンブール近郊拡大図>
 
 
 
ボアジチ大学の一施設として、カンディリ観測地震研究所(Kandilli Observatory & Earthquake Research Institute)が
イスタンブール市内のアジア側に設けられており、ここでは地磁気だけでなく地震・天文・太陽・測地などの観測が
なされています(写真1)。
 
 
 
        
    <写真1:カンディリ観測地震研究所・地磁気部門の建物>
 
 
 
  地磁気については1947年から観測を行ってきたということです。1997年にはScintrex社のフラックスゲート
磁力計によるデジタルデータの取得を開始し、それに伴って2000年に光学記録式の磁力計の運用が終わりました。     
 
 このフラックスゲート磁力計は、温度変化による測定への影響を小さくするために変化観測小屋の地下室
に設置されていました。変化観測小屋の場所は、地理座標で(41°04’N, 29°04’E)、地磁気座標で(38.5°, 107.5°)でした。
この小屋の隣には絶対観測小屋が建っており、そこで絶対観測を週に2回行っているそうです。このあたりの
偏角は東に4度、伏角は57度くらいで、磁場絶対値は47000nT程度ということです。50年余り続けてきた
地磁気観測ですが、イスタンブールの市街地が拡大するにつれて、近年は人工ノイズの影響がかなり大きくなってきた
ため、上述のイニクリ村に観測拠点を移すことになりました。
 
 イニクリ観測所は、イスタンブールから南東方向に100kmほど離れたところにあります。場所は、地理座標で
(40°30’N, 29°44’E)、地磁気座標で(37.8°, 109.5°)です。この観測所は、カンディリ研究所の出先機関であるイズニック
(Iznik)支所により運営されています(写真2)。
 
 
 
        
   < 写真2:イズニック支所玄関にて
  右から2人目がトゥエンチェル博士、左から4人目が大志万教授>
 
 
ですから正式な名称は、ボアジチ大学カンディリ観測地震研究所イズニック支所イニクリ観測所という長いもの
になります。イニクリ村は街道沿いに集落ができたような小さな村で、オリーブ・果樹栽培や酪農(主に山羊)が
主な産業です。余談ですが、この地域で生産されたオリーブや果物は非常においしいそうです。
 
 集落が切れたあたりの山腹にPC小屋、絶対観測小屋、変化観測小屋が3つ並んで建てられています(写真3)。
 
 
 
        
<写真3:Inikli観測所。左から、PC小屋、絶対観測小屋、変化観測小屋> 
 
 
 
この山腹では時々山羊の放牧が行われるということです。変化観測小屋には、すでにDMI製フラックスゲート磁力計
(FGE version Gモデル)が設置されており、6月から約2ヶ月間テスト観測を行ってきたとのことでした。
しかしデータロガーおよびデータ転送装置がないのでこれらを新たに日本から持ち込んで設置することと磁力計の
感度調整を行うことが今回の訪問の目的です。まず、変化観測小屋からPC小屋までの約50mに亘ってPVC
パイプを設置し、その中に電源ケーブルとデータ出力ケーブルを通しました。これは、ケーブルが山羊に切断
されたり、厳しい自然環境によって劣化したりするのを防ぐためです。炎天下でパイプの固定のために地面に
穴を掘ったり、ケーブルを引き回したりしたため、真っ黒に焼けてしまいました。 データロガーとデータ転送
装置はPC小屋に設置し、地磁気三成分のデータが1秒サンプリングで記録されるように設定を行いました。
これに加えて、1時間に1回の割合でダイヤルアップ接続を行い、ボアジチ大学および京都大学へデータを
準リアルタイムで配信するようになっています。当初、フラックスゲート磁力計の測定レンジは高緯度での
利用を想定したためか±4000nTとなっていましたが、磁力計の電気回路を調整することで中低緯度での観測に
適した±1000nTへ変更しました。ここでの絶対観測はイズニック支所の職員により毎週2回の割合で行われる
ことになっています。設置作業が終わった次の日の8月24日には磁気嵐が発生し、地磁気水平成分が約300 nTも
減少する様子が、無事、観測・記録されました(図2)。
 
 
 
        
  <写真2:Inikli観測所で2005年8月24日に観測された磁場変動> 
 
 
 
 トルコでは2005年1月にデノミが行われました。旧通貨(トルコリラ、TL)の0を6個取ると新通貨
(新トルコリラ、YTL)になります。2005年の一年間は経過措置として、新旧どちらの通貨も流通しています。
物を買うたびに、100と106のオーダーの数字が入り乱れて飛び交い、大変ながらも珍しい経験をしてきました。
 
 
                                               (能勢 正仁)