News and Announcements [in Japanese]
地磁気センターニュース
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地磁気世界資料解析センター News No.96 2006年3月29日
1.新着地磁気データ
前回ニュース(2006年1月31日発行, No.95)以降入手、または、当センターで入力したデータの
うち、主なものは以下のとおりです。オンライン利用データの詳細は
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/index-j.html) を、観測所名の省略記号等については、観測所カ
タログ(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/catmap/obs-j.html) をご参照ください。
また、先週の新着オンライン利用可データは、
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/onnew/onnew-j.html)で御覧になれ、2ヶ月前までさかのぼること
もできます。
Newly Arrived Data
(1)Annual Reports and etc.
MMK, LOV, TUM (Nov.2004 - Mar.2005), SOD, OUJ, NUR, HAN (Dec., 2005 - Jan.,2006),
NGK (Dec., 2005), SYO (2002 - 2004)
(2)Kp index: (http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/kp/index-j.html)
Jan. - Feb., 2006
(3)Magnetogram Digital image files :
AAE (1958 - 1965, 1970, 1971), ABG (2000), EIC (1958, 1960, 1961, 1963, 1964),
HUA (1957 - 1978), KOR (1958), NGP (2000), PND (2000), SIL (2000), TIR (2000),
UJJ (2000), VSK (2000), ZAR (1964), FRD (1961 -1979)
2.Dst指数、AE指数とASY/SYM指数
2005年5月〜2005年8月のDST 指数 Quick Look Dst (Provisional) を算出し、関係機関に配布し
ました。また、2006年2 月分までの1分値ASY/SYM指数を算出しホームページに載せました
(http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/aeasy/index-j.html)。なお、2005年分を載せた「MID-LATITUDE
GEOMAGNETIC INDICES ASY and SYM (PROVISIONAL) No.16 2005」を出版し配布致しました。新た
に配布ご希望の方はセンターまでお申し込み下さい。
3.Provisional Geomagnetic Data Plots について
世界各地で測定された地磁気1分値データをプロットしたProvisional Geomagnetic Data Plotの2005年
12月までのポストスクリプトファイルが利用できるようになりました。図の形式は2日分が1画面です。
(ftp://swdcftp.kugi.kyoto-u.ac.jp/data/pplot)。また、2005年7月から12月を載せたProvisional Geomagnetic Data
plots No.32 (Jul. - Dec., 2005)も印刷、配布いたしました。新たに配布ご希望の方は、センターまでお申し
込みください。
4.地磁気データカタログ検索後プロット/データ出力のページについて
これまで、当センター地磁気ディジタルデータサービスのページは、1時間値、1分値、1秒値と分かれ
ているうえ、観測所の選択リストがデータが少しでもあるものすべてが観測所名順に列挙してある中から選
ぶ形式のため、実際に欲しいデータを探し出すのには別途カタログ検索を行ってそれに基づき観測所を手入
力する必要があるなど不便な面がありました。そこで今回、カタログ検索を行いその結果を基にプロットま
たはデータ出力を行えるページが作成されました。
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/caplot/index.html (英語版)
http://swdcwww.kugi.kyoto-u.ac.jp/caplot/index-j.html (日本語版)
がそれで、それぞれ英語、日本語のデータサービスのトップページからリンクしてあります。以下では日本
語版 (図1参照) について使い方を略説します。
最初の行でデータ種別 (1時間値、1分値、1秒値)を選択します (必須)。次の行ではどの年と月のデータ
が欲しいかを指定します (年のみ必須)。以下の行では従来のカタログ検索と同様、必要に応じて欲しい地
理緯度、地理経度、地磁気緯度の範囲や、場合によっては観測所名やABBコード(の先頭部分)を指定できます。
これらはすべて"AND"条件となることに注意が必要ですが、デフォルトではすべて制限をつけないという
パラメータが与えられているので、付したい制限のみを指定するだけで済みます。最後に観測所の並べ方を、
観測所名(デフォルト)のほか、ABBコードや地理緯度、地理経度、または地磁気緯度から、さらに正順
(デフォルト)の他に逆順も選べます。
例えば2003年5月の南半球の1時間値が欲しい場合で、観測所を地磁気緯度の逆順(地磁気赤道から南極
方向)に並べたい場合には図2のように指定して実行させると、図3のようなページが現れます。このページ
は、従来の1時間値データサービスのページに類似していて、観測所がデータのあるものだけから選ぶ形に
になっていることと、期間が指定されたものに基づく値になっていることが異なるだけです。従ってプロット
形式やデータ出力の選択はもとより期間も変更可能です。逆にカタログは月単位なので、1分値や1秒値に
ついては日以下を改めて指定する必要があるほか、その日が欠測である可能性があることに注意が必要です。
<図1.初期画面>
<図2. 図1にパラメータを入力をした例(部分)>
<図3.図2を実行した結果の出力 (部分)>
5.地磁気鉛直勾配法
海底における地磁気変化は,陸上で測った地磁気変化とどの位違っているのだろうか?図1は,陸上と海底で
同時に捉えた磁気嵐の例である。
図1.鹿屋地磁気観測所における水平分力の時間変化(上)と海底における同時データ(下)。
縦軸のスケール(nT)はどちらも同じだが,絶対値に関しては陸上は右,海底は左の数字を
参照されたい。横軸は,1999年12月1日00:00UTCからの経過時間(分)である。海底のデータは,
鹿屋から南南東に約500km離れた水深5431mの地点で観測されたものである。
図1から,海底の地磁気変化は陸上に比べ強い減衰を受けている事が分かる。これは主に,外部磁場の
時間変化,すなわち,誘導起電力によって,良導体である海水中に強い誘導電流が流れる為である。例えば,
今無限に深い海を考えてみると,水深zにおける磁場の水平成分Bは,海面の磁場水平成分B0を用いて
次の様に表す事ができる。
海水の電気伝導度をs(S/m),考える地磁気時間変化の周期をT(秒)とすれば,δは,
で与えられる。「表皮深度」と呼ばれるδの単位はkmであり,式[1]から電磁場の振幅が導体表面に比べて
e分の1になる深さを表す事を分かる。すなわち,半無限一様導体中の磁場の振幅は指数関数的に減少し,
かつ,その位相は一定の割合でずれて行く事を式[1]は示している。これが,図1で海底における地磁気変化が
陸上のそれと比べて減衰し,また,位相のずれを含んでいる様に見える理由である。
しかし,この振幅比と位相差は,水深が同じ海底であればどこでも同じ,という訳ではない。何故なら,
これらは海底下の電気的構造にも依るからである。導体である地球は外部磁場の時間変化を誘導電流によって
打ち消そうとするが,十分深い所で外部磁場を0にしてしまえれば良いのであって,何も海水層だけで打ち
消してしまう必要はない。従って,海底下の構造が良導的であれば海水中での減衰は弱められ,逆に絶縁的
であれば強められる。この事を利用して地球内部電気伝導度構造を推定する方法が,「地磁気鉛直勾配法
(Vertical Gradient Sounding Method)」である。言わば海底地磁気観測点は,減衰の程度を調べるチェック
ポイントなのである。この方法を使えば,電場の観測を行わなくても,地磁気地電流法(Magneto-
telluric Method)と同様に地球内部の電気伝導度の絶対値を推定する事ができる。
本稿の残りの部分では,「地磁気鉛直勾配法」にまつわる代表的な誤解を二つ挙げて,読者の注意を喚起して
おきたい。
一つは,陸上と海底の地磁気水平成分の比から電気伝導度の絶対値が求められるのなら,陸上地磁気観測
点同士を比較しても構造決定ができるのではないか,という誤解である。つまり,地磁気水平成分の変換関数
を使えば,電場の観測を行わずとも,地下構造が求められるし,かつ,磁場成分間の変換関数は,地球内部
電磁誘導分野で最近最も問題になっている「観測電場の歪み」とは無関係な量だから,二重に都合がいい,
という訳である。しかし,残念ながら,このやり方では地下電気伝導度のコントラストを正しく求める事は
できても,絶対値まで求める事はできない。話を簡単にする為,例えばボアホールなどを利用して地上と地下で
地磁気水平成分の観測ができたとする。両者の比を取れば,確かに高さの違う観測点間に流れている誘導電流量
は推定できるが,電場の観測がない限り,それだけでは電気伝導度の絶対値が求められない事はオームの法則
から明らかである。逆に言えば,陸上と海底の比較から構造決定を行う「地磁気鉛直勾配法」では,海水の
電気伝導度が非常に一様であり,かつ,その値が良く分かっている事を大前提にしているのである。陸上で
電気伝導度の絶対値を決めるには,やはり「地磁気地電流法」を使った方がいいであろう。但し,その際
地磁気水平成分の変換関数を併用すれば,「電場の歪み」の問題が解決できる可能性はある。
もう一つは,海底データに「地磁気鉛直勾配法」を適用するには,海面での同時データが必要なのではないか,
という誤解である。確かに厳密な一次元解析を行う場合にはそうかもしれないが,高次元解析になると事情が
違ってくる。例えば二次元解析の場合(図2),陸上地磁気観測所と海底観測点の地磁気水平成分の比として
求めたVGSの観測応答と,数値計算誤差の範囲で厳密に対応する理論応答を計算する事は十分可能である。
この場合問題はむしろ,海面と海底の比を観測値として取っているかではなく,如何に陸上及び海底地形が
数値的に表現できているかや,考える周期帯で外部磁場の平面波近似が実際に成り立っているか,の方が重要に
なってくる。前者は海底データ固有の問題であるが,後者は,多くの場合,周波数解析の結果をコヒーレンスに
基づいて吟味すれば,平面波に対する観測応答をうまく取り出す事ができ,かつ,これは「地磁気鉛直勾配法」
に限らず自然の電磁誘導を利用した構造探査法に共通する問題でもある。
図2.二次元の場合の「地磁気鉛直勾配法」適用例。陸上地磁気観測所(☆)と海底観測点の対応付けは,
二次元メッシュ上で実現可能である。
参考文献
*文中には挙げなかったが,「地磁気鉛直勾配法」については,以下の文献が参考になる。
Ferguson, I. J., Lilley, F. E. M. and Filloux, J. H. (1990): Geomagnetic induction in the Tasman Sea
and electrical conductivity structure beneath the Tasman Seafloor, Geophys. J. Int., 102,
299-312.
Law, L. K. and Greenhouse, J. P. (1981): Geomagnetic variation sounding of the asthenosphere
beneath the Juan de Fuca Ridge, J. Geophys. Res., 86, 967-978.
Shimakawa, Y. and Honkura, Y. (1991): Electrical conductivity structure beneath the Ryukyu
trench-arc system and its relation to the subduction of the Philippine Sea plate, J. Geomag.
Geoelectr., 43, 1-20.
藤 浩明 (2005): 海底電磁気観測の現状と将来,物理探査,56,227-239.
(藤 浩明 − 富山大学・理学部・地球科学
地磁気世界資料解析センター・非常勤講師)
6.国際ディジタル地球年(eGY)国内委員会ホームページのご紹介
地球物理学の発展に巨大な貢献をし、世界資料センター (World Data Center) 設立と発展の基となった、国際
地球観測年 (IGY: International Geophysical Year1957-1958) から50年を記念して2007-2008に計画されている国際
ディジタル地球年 (eGY: electronic Geophysical Year) 国内委員会ホームページが、下記URLアドレスに作成されました
ので、ご覧ください。
http://swdcft49.kugi.kyoto-u.ac.jp/egy/